ヴィーガン/ホリスティック栄養士とは?心身の健康に多方面からのアプローチを【ヴィーガン管理栄養士Piggyさんインタビュー後編】
ヴィーガン管理栄養士Piggyさんへのインタビュー後半では、Piggyさんがヴィーガン管理栄養士になったきっかけや、さまざまな活動の根底にある想いをお聞きします。
(※記事内の写真はすべてPiggyさんのブログからのご提供です)
ヴィーガンとは?
ヴィーガンとは、ヴィーガニズムの定義である「可能な限り、動物の搾取を減らそうとするライフスタイル」に沿った人たちのことを指します。ヴィーガンの人は、肉・魚・卵・乳製品・はちみつなどの動物性食品の摂取をしないだけではなく、革製品の物や動物実験の行われた製品を買いません。「完全菜食主義者」とも訳されます。
"ヴィーガン"管理栄養士になったきっかけ
7歳の時から料理が好きで、家族が生活習慣病に苦しんだことから辛い思いをする人たちをサポートしたいと思い、日本で管理栄養士になったPiggyさん。
――ヴィーガンになったきっかけはなんですか?
大学を卒業して日本で1年半特別養護老人ホームで管理栄養士として働いたあと、カナダで栄養士として働くために現地の学校に通い始めたことがきっかけです。
カナダってすごく健康や環境に対して意識が高くて、学校のクラスメイトの8割から9割がヴィーガンもしくはベジタリアンでした。
始めはなんとなく「ヴィーガンって栄養がきちんと取れないから健康に悪いんじゃない?」と思っていて、自分事として考えたことはありませんでした。
友達のSNSにアップされた、畜産動物の飼育状況や肉食により進む環境問題を紹介するドキュメンタリーを見て、ヴィーガンって食事の問題だけではないのだと気付きました。
とくに動物にしていることが残酷に感じて、殺しに加担していた自分が嫌になり、すぐに「私もこれからヴィーガンになる」と言ってヴィーガンになりました。
――ヴィーガンになってから、今のようにヴィーガン管理栄養士の活動も始めたんですか?
そうですね、ホリスティック栄養士に加えてヴィーガンへのアプローチもする栄養士としても活動し始めました。
動物性食品を摂らないとなるとビタミンB12やタンパク質が不足するように感じると思うのですが、まったくそのようなことはなく、野菜や穀物、豆類など植物性食品で十分に補える。そういうことを伝えたくてTwitterやInstagram、ブログでの発信も始めました。
ホリスティック栄養士とは?
ホリスティック栄養士は、自然食品や製品を使用してクライエントを治療する専門栄養士です。孤立した症状を治すのではなく、クライエントの全体を治療します。
栄養面だけではなく、クライエントのライフスタイル全体をみてひとりひとりに合わせた健康への提案を行うホリスティック(全体的)な介入をする栄養士です。
住居の築年数や銀歯の有無など、環境の影響もみる栄養相談!
――ブログではホリスティック栄養相談も受け付けていますよね。日本では馴染みのない言葉ですが……
私の栄養に関する発信は日本の管理栄養士とホリスティック栄養士のミックスで、どちらかというとホリスティック栄養に関することが多いですね。
ホリスティック栄養相談では食事だけではなくハーブやヨガを取り入れることを提案したり、ストレスにアプローチしたりしています。ホリスティックはオーガニック食品や無添加食品を選ぶなど食べ物の質にも気をつかう、本当に大事な考えです。特に一番大事なのはホールフードであること。
管理栄養士さんによりますが、食べ物の質・住む環境・ライフスタイルなどに注目せず、食事や栄養のみを指導するのが大半です。ホリスティック栄養士はそういった食事以外のあらゆる方面から健康の維持や、健康になることを目指します。
ホリスティック栄養士は心の健康状態、ストレスレベル、睡眠の質、あとはクライエントさんによるのですがそれに加えて家が築何年かや、銀歯の有無も加味して健康状態を見ることもあります。
築年数が古くて木が腐っていると、有害物質が空気を汚染して脳に影響を与えていたり、銀歯が溶けて神経系に問題が起きていたりするんです。
食べ物や栄養だけを見るのではなくて、クライエントさんを取り巻いている環境にも目を向けて、ホリスティックな栄養指導をしています。
――SNSやブログの他にも、いくつか活動をなさっていますよね。
いま抱えているプロジェクトは2つあり、ひとつは畜産農家さんがプラントベースの会社や野菜農家に移行する手助けをするというものです。もうひとつは慣行農家さんがオーガニック農家に移行する手助けをするもの。
他のヴィーガン管理栄養士さんとやっているのですが、進めるうちにいろいろな問題が出てきて。農家さんたちに口だけ出して移行にかかるお金などには関与しない、ということにはしたくないので、私たち自身にある程度の資金が必要だということになりました。
そこで、これらのプロジェクトにかかるお金を自分たちでまかなうために、最近プラントミルクの会社を立ち上げました。私は環境活動家でもあるのでサスティナブルな生産方法をとる会社にしたいと思っています。
日本でたくさんとれるお米を使ったライスミルクを生産・販売して、地産地消を目指すと地域貢献にも繋がると考えています。
東京で減農薬栽培で頑張っている農家さんのお米を使って応援したり、日本では生産できない食品もオーガニックやフェアトレードにこだわったり、「地球上に住む生き物すべてに優しい生き方をする」ことをコンセプトにやっていこうと思っています。
病院や介護施設、学校給食にも乳アレルギー対応でヴィーガンのライスミルクを提供したいと考えています。
ここにも資金面での問題点があるのですが、とりあえずライスミルク専門店を立ち上げて売り上げの一部を『給食プロジェクト』と『移行プロジェクト』に回そうと思っています。こうしてみると、私がやっていることはすべてが繋がっていますね。
誰も置いてけぼりにすることなく、地球に存在する生き物すべてに優しい世の中を
――ヴィーガン管理栄養士として情報を発信するだけに留まらず、こういった活動を始めたきっかけはなんですか?
SNSでアンチヴィーガンの方々に「今まで畜産農家として生きてきた人たちはどうなるんだ、廃業になった人たちの仕事先はどうするんだ」と言われて、確かにそうだなと思ったんです。それまではヴィーガンを広めることだけにフォーカスしていてそこまで考えが及ばなくて。
私に出来ることを考えて、日本に移行サポート団体がないなら作ってしまえばいいじゃないかとプロジェクトを立ち上げました。
それからは地球や動物を守る中で誰一人として欠けてはいけない、誰も置いてけぼりにすることなく全部守れるような活動をしたい、という気持ちに変わりました。料理から始まり、今はすごく幅広く活動をしています。
いつも心の中にあるのは、「地球に存在している生き物に優しい世の中を作りたい」ということ。そういう世界を見たいんです。抽象的だけれどそれが自分の中で一番大切だと感じている思いです。
地球は一つしかないのだから、環境を破壊しないためにサスティナブルな生活をする。動物の犠牲も少しでも減らせるようなヴィーガンな生き方をして、もちろん人も大切にする。争いのない世の中にしていきたい。
編集後記
生活の中でヴィーガンを実践するだけにとどまらず、持続可能な社会を実現する際に取り残されてしまう人が出ないよう、さまざまなプロジェクトに取り組むPiggyさん。
お話を聞いていて、「すべてが繋がっている」とおっしゃったようにPiggyさんも自分のできることを一つ一つ行動に移した結果、より多くの人へのアプローチができる方法に辿り着いたように感じました。
ヴィーガン生活に移行することはもちろん、目標を達成するためには一歩一歩着実に行動を重ねることが大切ですね。
確固たるポリシーのもと理想の世界に向けてパワフルに行動できるのは、健康であってこそ。Piggyさんのブログではヴィーガン料理のレシピや健康、栄養についてのTipsが紹介されています。
レシピ作成やホリスティック栄養相談も受け付けているので、栄養面で不安がある方はぜひ一度ご相談してみてはいかがでしょうか?