morinosoyの日記

ライティングの練習も兼ねて、いろいろな記事を載せます。

『プロミシング・ヤング・ウーマン』感想殴り書き

【ネタバレ注意】

 

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結局女が死ぬ、と思って泣いた。


復讐なんて言えるほどの加害行為をキャシーはしたか?酔ったフリして、一切明確な同意をしないまま「いい人」である男に連れてかれて、そのまま同意をとらず行為に及びはじめ抵抗する声も聞かない男にシラフであることを明かし、真顔で「やめて」と言うだけ。性的なからかいの言葉を「冗談で」かけてくる男たちに、笑いかけずに見つめ返すだけ。同じ不安を味あわせて、故人のことを思い出させるだけ。あ、車破壊してたか。

 

同意の言葉を重視していたキャシーは、やっとできた心を許せそうな存在である彼が「わからない」と言った時、スっと身を引いて帰った。

 

最後の独身パーティのシーンでも、男に「何をしたか」を聞いただけとも言える。「彼女には常にあなたの名前がつきまとい、別のものになってしまった。あなたこそ、彼女の名前が付きまとうべきなのに」そう言ったキャシーは小指の爪ほどの刃を持つメスを取り出し、手錠で繋がれ暴れる男に乗りかかった。メスを持って、男の腹部のシャツを剥いて突き立てようとする。一緒に観に行った弟は「男を殺そうとした」と言っていたけれど、そんな小さなメスで何ができる?首に突き立てるのかと思ったがわざわざ腹に向かったし、手術じみたことしたいなら意識を失わせたり筋肉弛緩剤を飲ませるなりしてたはずだ。抵抗して暴れる男に、キャシーは彼女の名前を刻もうとしたのではないか?一生彼に付きまとうべき名を。


キャシーは危機を感じた男に乗りかかられて、枕で窒息死するまで、長い、長い間、最後までもがいていた。
こうやって女の声は塞がれるのか。


失踪届を出されたキャシーについて、父親は「そういうところがあった」と精神的に不安定だったと言い、「愛している」と言った元恋人も、自分に嫌疑が向くのを恐れ、確かにそうだった、自傷するのもありえると言った。
酔って連れていかれた部屋でシラフに戻り、はっきりと拒絶を言葉にするキャシーに「サイコパス」と言ったやつもいた。


真顔の女、痛みを忘れない女、男を恨む女は精神疾患に結び付けられやすい、と思った。それとも、強い感情を抑圧しようとしてしまったがために病に陥るのか。ここでは公開していないが、以前書いた「怪物とされる女たち」でも言及した。大きな、特に負の感情を持つ女は異常とみなされる。

 

キャシーは確かな爪痕を残した。「私がこの日に失踪したら、○○に…」女は死なないと復讐も遂げられないのか?

 

ここまで女が男が、とさんざん言ったが、この映画は男女の二項対立にせず、復讐の対象には被害者を軽視し二次加害をした何人もの女が、そして自分のしてきたことが忘れられず激しく悔いて、罰され許されることを望む男がいた。彼女のことを覚えて悔いていた復習対象者は、その男だけだった。

 

「遊んでいるから」と被害を信じられなかった女、死体を前に「殺してしまった」と言ってもなかなか信じて貰えなかった加害者の男。いいか、お前は悪くない。これは事故だ。お酒を飲んでたの?仕方ない、あなたが悪い。


映画的な復讐の派手さや、次々と起こる殺人、なんてものはなく、キャシーのやってることは意図的な面を除けば至極普通のこと。最後のシーンもキャシーには男を殺すつもりはなかったと私は思う(自分が殺されることは想定していただろうが……)。だからこそ、「今、ここ」にある現実味があった。

 

♡愛♡の力でハッピーエバーアフターになることもなく(あのキスシーンで終わったら暴れるところだった)、キャシーが男たちに求めるものとキャシーの行動に矛盾がないこと、キャシーをエンタメ的な猟奇殺人者に仕立ていないのがとてもよかった。だけどやっぱり、女は死ななければいけないのかという気持ちが残る。

 

上映後、『お嬢さん』、『ドラゴン・タトゥーの女』、『ゴーン・ガール』の衝撃的な断罪シーンが頭をよぎった。『ババヤガの夜』のような話がもっと読みたい。

とりあえず今から、何度目かわからない『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』上映会を、初めて弟を巻き込んで開催します。

 

追記

キャシー役のキャリー・マンガン、『17歳の肖像』のジェニーか!あの役を演じた人がキャシーを演じるの、最高すぎる。これから『17歳の肖像』を観る人にはぜひ『プロミシング・ヤング・ウーマン』をセットで観て欲しい。

 

pyw-movie.com

 

 

おうちで友達と遊ぼう!ワクワクを届ける「おうちハック!」を友達にプレゼントするには?【口コミ】

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 コロナ禍でなかなか会いに行けない、遠方に住む友達の誕生日。プレゼントを詰めた小包を送ろうにも緊急事態宣言下で買い物もままならず、かといって通販で注文してそのまま友達宅に送りつけるのも味気ない……。

 

どうせなら何かキットを買って、電話を繋げて通話しながら一緒に楽しむのはどうだろう?と「おうち キット」で検索をしている時に見つけたのが、今回紹介する「おうちハック!」という体験キットをサプライズでおうちに届けてくれるサービス。

 

ouchihack.com

この記事では、「おうちハック!」サービスを友達にプレゼントする方法と、実際に届いたキットを紹介しようと思います。

 

 

「おうちハック!」とは?

「おうちハック!」とは、利用者の要望に合わせて休日体験を企画してくれる「休日ハック!」を運営する会社が今年3月にリリースした、体験キットがサプライズでおうちに届くサービスです。

 

簡単なアンケートの結果をもとに、100種類を超えるキットの中から選定して自宅に届けてくれます。何が届くかは当日までのお楽しみで、到着3日前にキットの“ヒント”が知らされるなど、キットの到着を待つ間も楽しめます。

友達にプレゼントできるの?

公式サイトには記載されていませんでしたが、公式LINEに問い合わせてみたところ、「特別依頼フォームでの対応であればできる」とのお返事が!(2021年5月14日時点)

 

現状、1つのLINEアカウントからは1つの注文しか対応できない仕様となっているようです。注文時にアンケートへ回答しなければならないので、さもありなんですね。

 

公式LINEに問い合わせると、快く特別依頼フォームを送ってくださるので悩んでいる方はぜひ。通常と異なり、特別依頼分は情報開示がすべてLINEのメッセージでの実施になるようです。(通常依頼分はLINEに送られてくるURL先での開示)

依頼からお届けまでの流れ

では実際に自分の分の依頼と、友達へのプレゼント分の依頼を同時にやるにはどうすればいいのか?

その手順は、

  1. 自分の分は通常サイトからクレジットカード払いで申込み
  2. 友人の分は公式LINEで運営さんが送ってくれる「特別依頼フォーム」を友人に送り、アンケートの回答と支払方法で「銀行口座振込」を選択、申し込みをしてもらう
  3. 自分と友人の分の依頼、それぞれの通知がすべて自分に届くようにするか、友人の分は友人に届くようにするか選択(私は別途友人に連絡先を設定させるのもな…と思い全て私に連絡が来るように設定)
  4. 「銀行口座振込」の友人分は金額が確定次第、自分に公式LINEから通知が来るので期限までに振り込む
  5. 到着予定日および請求金額確定時と、到着3日前にキットのヒント告知が公式LINEに届く
  6. キット到着後、到着予定日朝に送られてくる公式LINEからの商品お届け理由開示URLをクリックし、メッセージを確認!友人分は到着を報告後、LINEメッセージでお届け理由が開示されました

手順2で友人が特別依頼フォームから依頼を完了させると、公式LINEから自分に友人の本人確認のため、申し込み名を聞かれます。

 

長々と書きましたが、「おうちハック!」公式LINEさんに問い合わせれば、すべていいように取り図ってくれます。

 

「おうちハック!」公式LINEさんは今回、営業時間内にした問い合わせに対して、なんとすべて5分以内の即レスをしてくれました。

 

さらに、営業時間外の問い合わせの返事や、ヒント告知・到着日のメッセージは営業時間開始の午前8時ぴったりにメッセージが届くなど、驚きのコミュニケーションの取りやすさ。ありがたいです。

 

おかげで友人にも詳細な値段を知られることもなく、スムーズに半サプライズのプレゼントを贈ることができました!

体験キットが到着!

5月14日に注文、5月18日にお届け予定日が確定し、5月22日に到着しました!
「10日前後に到着」とのことでしたが、注文から8日で到着。偶然にも友人の誕生日当日にキットが到着することに。

 

友人宅にも無事に届き、「おうちハック!」公式LINEで私と友人、それぞれのキットの選定理由が開示されました。友人と通話を繋ぎ、早速段ボールを開封

 

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段ボールを開けるとおしゃれな箱が!

私に届いたのは、「苔テラリウム 手作りキット カワウソ」。リラックスする休日が理想で、ハンズフリー通話しながら楽しめるものを、とアンケートで希望したことを加味して選んでくれたようです。

商品選定理由開示では、選定理由に加えてキット内容の詳細、おうちハッカーからのコメントも見ることができます!結構文量があって読むのが楽しいですよ。

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苔テラリウムキットの内容

キットにはピンセットや霧吹きも付いていたので、すぐに取り掛かることができました。到着3日前に届く「お届け商品についてのヒント」で、事前に梱包サイズや準備するものが知らされています。

 

アンケートの際に、電子レンジやミシンなど、家にあるものをチェックされているので、商品が到着してから「道具がないからできない!」なんて悲劇が起こることもありません。

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通話しながら、約1時間で完成!

そして、完成したのがこちら!友人と通話しながら作成し、約1時間で完成しました。土と緑が大好きな私は、苔を触るのが楽しくて、作っている間はしゃぎっぱなしでした。

 

ちなみに友人に届いたのは、オルゴナイトの手作りキット。数種類の天然石がたっぷり用意されていて、レジンが尽きるまでいくつも作れるものでした。自宅にあったビーズを加えて作ったりしていて、楽しんでもらえたようでよかったです。

感想

注文の相談から商品到着まで懇切丁寧に対応してくださり、無事に友達の誕生日を祝うことができました!事前のアンケート内容に沿ったキットを届けてくれるので、必要な道具が家になかったり、本人の好みから大きく外れたりということが無く、自分でキットを選ぶよりも安心してプレゼントできます。

 

3日前に届くヒントや、当日開示の選定理由を見るのも楽しく、注文してからキット到着までの間もワクワクを共有することができました。

 

キット作成は通話開始から1時間程度で終わりましたが、その後も会話が弾み、合計通話時間はなんと……3時間48分!久しぶりにめいっぱい友達と遊べました♪

 

マンネリ化したおうち時間に、小さなサプライズを届けてくれる「おうちハック!」。お一人でも家族とでも、おうち時間を充実させたい方はぜひ利用してみてください!

 

ouchihack.com

もう後悔はしたくない!女の子の輝ける場を作る〜人気ブロガーryokaさんインタビュー第二弾〜

女子大生のためのトレンドメディアmissyや、LINEブログでライターとして活躍するryokaさん。第二回目のインタビューとなる今回は、大学を卒業し新社会人になった今も活動を続ける原動力や、その想いを取材させて頂きました!

 

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――こんにちは。本日はどうぞよろしくお願いします。早速ですが、前回取材させていただいた時とはかなりryokaさんの置かれている環境が変わっているようですね。

 

そうですね、無事に大学を卒業して、今は新社会人として会社で美容メディアを担当しています。平日は会社の仕事を、休日はライターとしての仕事をというように、きっちり分けてこなしています。入社してからも毎週、休日はブライダル関係の撮影をしたり、記事の打ち合わせに行ったりと何かしら予定が入っていますね。

 

自分が求めているのは、波乱万丈な人生だった

 

――かなり忙しい日々を送っていますね。休むことなく精力的に活動しているようですが、その原動力はなんでしょうか?

 

自分の気持ちに正直に、「好き」とかワクワクする気持ちを大切にして、「やりたい」と思ったことは全部やると決めているんです。後悔したくないという気持ちが強いんですよね。少しでも興味を持ったら、失敗を恐れずに挑戦する!

 

――「やりたいことをやる」、実行していくのはなかなか難しいと思います。それをモットーに生きていこうとするきっかけはありましたか?

 

高校生の時に、体育祭でチアをやりたいとか、承認欲求を満たしたいという思いがあったにも関わらず、一切行動に移さなかったんです。卒業式でそのことを猛烈に後悔して。大学生になったらやりたいことは全部やろう!と決めました。

 

大学生になって本当にいろいろなことに挑戦して、そうしてはじめて、私は安定した人生よりも、波乱万丈で刺激的な人生に幸せを感じることに気付きました。

 

両親の反対にあっても、自分の人生で後悔はしたくなかった

 

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――いろいろな経験をして刺激をうけたい、後悔したくないという思いが強いのですね。

 

はい。親や周囲の人からは、親の勧める安定した道を進まないことにすごく反対されました。昔から両親に「結婚することが女の幸せ」「仕事場は結婚相手探しの場」だと言われてきて、私も女性にとって仕事は自己実現の手段ではなく、結婚までの腰かけだと思っていました。

 

でもブログを始めて、たくさんの女性起業家やバリバリ仕事をこなす女性と出会って、女性も仕事を楽しんでいいんだと思えるようになりました。女性起業家は起業家全体の約16%とまだまだ少ないのが現状です。

 

女性も起業したり、主体的な人生を送ってほしい。ワクワクすることはどんどんやればいいし、チャレンジしやすい場を私も作っていきたい。

 

――ブログを続けているのも、そういった場を作ることへ繋がっている?

 

ブログをやっていると、チャンスがたくさん舞い込んでくるんです。いい人脈が築けるし、女性でバリバリ仕事をしている人に出会えて、自分のロールモデルも見つかりました。実は今勤めている会社も、ブログを続けていたことを認められて採用されたのです。

 

なによりも、私のワクワクすることや好きなことを紹介することが、共感してくれる読者のかたにとって何かワクワクのヒントになればいいなと思っています。人生を楽しくする手助けがしたい。

 

女の子たちはもっと自分の為に生きていい!

 

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――なるほど。それと地続きで三年後の起業の目標があるのですね。

 

ええ、女性がもっと輝ける場を作りたいんです。女の子はもっと自分の為に行動してもいいと思う。

 

私の周りにいるお母さんたちは、お父さんに尽くして自分の為に生きていない人が多くて、それは友達の女の子たちもなんです。彼氏のいる子は彼氏に合わせて自分のライフプランを考えている子が多い。このぐらいに結婚するから、仕事はそこまで重要視しなくていい、とか。

 

周りにロールモデルとなる働く女性がいないことも、一因としてあると思います。自分が何ができるか考えて、私が後輩たちにとってロールモデルになる存在になりたいと思いました。

 

自分の好きなことを仕事にして、楽しく働いている姿を見せる。こういう生き方もできるんだよって、人生の選択肢の一つとして考えてもらいたい。

 

「応援される人」になる

 

――そのために今、休日もフルで活動して三年後に向けて準備しているのですね。

 

まだ具体的に何をすればいいとか、どうするかはわからないけれど、今自分にできることを一生懸命やり続けることが三年後の起業に繋がっていくと思っています。

 

「応援される人」になることも私の目標なんです。人は、一生懸命頑張る人や、楽しんで活動している人を応援したくなると思っています。

 

就活で出会った中小企業の社長に「一人で会社をおこすのは不安だし、大変じゃなかったですか?」と聞いたら「だから僕は一人ではしない。いろんな人を巻き込んで、協力してもらってやる」という答えが返ってきて。その言葉を聞いてハッとしました。

 

私も、私を応援してくれる人や同じ考えを持つ人に積極的にアプローチしていって、いろんな人を巻き込んで、みんなの夢、そして私の夢も叶えていきたいなと思っています。

 

編集後記

地元の九州で、男性に尽くす人生を送る女性達を見て育ったryokaさん。女性が主体的な人生を歩み、輝ける場所をつくるための準備を着実に進めています。

 

「自分のことを包み隠さずオープンに話すことが好き」でブログを始めたというryokaさんの、「好き」がつまったブログはこちら。

lineblog.me

ryokaさんの周りにたくさんの女性が集まり、いきいきと仕事をする様子が思い浮かびます。三年後が楽しみですね♪

ヨーロッパ各都市を旅したムーミン作者が描く短編作品集 「旅のスケッチ」トーベ・ヤンソン著

 

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トーベ・ヤンソン初期短編集「旅のスケッチ」 画像はムーミン公式サイトより

まるいフォルムの不思議な生き物、ムーミンとの出会いは物心つく前に済ませていたが、その著者であるトーベ・ヤンソンとの出会いは大学2年生の時だった。

 

近所の図書館で、アンティークな色合いの全8巻のトーベ・ヤンソン・コレクションを見つけて『トーベ・ヤンソン・コレクション5 人形の家』を手に取ったのが始まりだ。

 

幼少期から漠然とフィンランドに憧れを抱いていたので、フィンランドに住む作家がどういう物語を書くのか興味があった。

 

その日は図書館から映画館に向かい、映画が上映される寸前まで表題作の『人形の家』を読んでいたのだが、私は見事にトーベの虜になった。何の映画を観たのかは覚えていない。

 

先日待ち望んでいたトーベ・ヤンソン自選短篇集『メッセージ』が刊行されたので、記念にトーベが『ムーミン』誕生以前に書いた旅の短編集を紹介する。

 

 

あらすじ

パリで出会った鬚が素敵な芸術家との<霊的な交流>を楽しむ娘、小さな嘘で孤独な日々からひととき解放された老人の葛藤、旅先で出会った黒衣の女との真夜中のカフェ巡り……。戦前のヨーロッパ各都市を旅した著者が、パリ、ドレスデン、セルㇺランド、ヘルシンキヴェローナ、カプリを舞台に描く、皮肉とユーモアが冴える短編小説集。

作家情報

1914年ヘルシンキ生まれたスウェーデンフィンランド人、トーベ・ヤンソン。彫刻家の父と画家の母を持ち、はやくから画家、短編作家として活躍する。1945年から25年間にわたって書きつづけた『ムーミン』シリーズは国際アンデルセン大賞ほか多くの賞を受賞し、今でも世界各国でたくさんの読者に愛されている。『ムーミン』シリーズ完結後に執筆しはじめた大人向け小説もその作風を評価され、高い評価を得る。没後20年になるトーベ・ヤンソンの半生を描いた映画『TOVE』(原題)も2021年秋に日本公開が決定されている。


すれ違う誰かの生を感じる物語

降りたことのない駅の、いつも通り過ぎてしまう町。窓からのぞく住宅街や商業施設を見ていると、ここにも生活している人がいるのだなと不思議な気持ちになる。

 

建物の様式も、あふれる言葉も食文化も異なる外国ならなおさら。訪れるまでは自分の中で生きていなかった人たちがひしめく旅先にも、人の数だけ物語があることを思い出させてくれる短編集だ。

 

実は題名からトーベの旅行記だと勘違いしていて、コロナ禍で見通しが立たない海外旅行への渇望を癒すために読み始めた。

 

エッセイではなかったものの、ヨーロッパ各都市を舞台に鮮やかに描かれる短編たちは心をパリへ、次はドレスデンへ……と見事に飛ばしてくれた。

 

短編たちはどれも人生への皮肉とユーモアに満ちているうえ、トーベの短編はとても物語の締め方が上手いので読後感が抜群に良い。ああ人生っていうものは!

 

私のお気に入りはドレスデンが舞台の『手紙』とヴェローナが舞台の『サン・ゼーノ・マッジョーレ、ひとつ星』

孤独な老人が主人公の話と、旅先で出会った日々にうんざりしている女性に振り回される話だ。これを読めばあなたもトーベの筆致の虜になるはず。

 

 

掃除嫌いのための新生活ライフハック~水回りこれだけは買っとけ5選

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明日からは心機一転、年度が変わる4月ですね。大学入学や就職など、新生活が始まって忙しくなる人も多いのではないでしょうか。今回は一人暮らし歴4年の森野が、掃除嫌いや掃除に時間をかけたくない人でも水回りを清潔に保てる掃除グッズを紹介します!

 

台所

まずおすすめするのはなんといってもコレ!激落ちくんシリーズ

 

台所の水垢・黒ずみ汚れにはもちろん、風呂場や洗面所の汚れなどなんにでも使えます。使い捨てなので使用後は汚れごとポイっと捨てられるのも魅力的。カットされているタイプをシンクの下にストックしておくと、料理のすきま時間に手が伸びやすくて◎

 

面白いほどごっそり汚れを取ってくれるので、やみつきになります。

 

 

風呂場

家の中で一番湿気がたまりやすく、掃除も行き届きにくいお風呂場。自分の汚れと疲れをリセットする場所がカビだらけで清潔感がなかったら、ただでさえ面倒な風呂の時間が輪をかけて憂鬱なものに。

 

特に私の家の風呂場は換気扇がなく、小さな窓があるだけなのでそこかしこにカビが……。

 

激落ちくんでカビは落ちるけれど、わざわざ風呂場で掃除をしたくない私が頼っているのがおふろの防カビくん煙剤

 

2か月に1回風呂上りにこれを焚いておくだけで、風呂掃除は完了。あくまで防カビなのですでにあるカビには効きませんが、一度激落ちくんでカビを取り除いておけば完璧です。

 

ルック おふろの防カビくん煙剤 消臭ミントの香り 4g

ルック おふろの防カビくん煙剤 消臭ミントの香り 4g

  • 発売日: 2016/04/26
  • メディア: ヘルスケア&ケア用品
 

 

トイレ

掃除嫌いな人でなくてもイヤであろう、一番の難関トイレ!汚れやすく不潔なトイレを、いかに掃除の頻度を下げ清潔に保つか。一人暮らしを始めてずっと試行錯誤してきました。

 

私が4年かけて辿り着いた神商品を紹介します。

 

まずは汚れを残さないためのトイレスタンプ約1週間に1回、スタンプを押すだけ。これを便器に貼っておくだけで断然トイレがピカピカに保たれ、掃除の頻度がガクっと減ります。これがなかったら生きていけない。

 

 それでも2、3カ月に1回は便座に少し黒ずみが出ることも。そんな時の為に用意しているのが流せるトイレブラシの替えブラシ無印の柄付きスポンジの柄

 

 

www.muji.com

以前は置き型のトイレブラシを使っていたけれど、掃除後の汚れた水が溜まって膿みたいな塊ができていたり、清潔さを保てないことが気になっていました。

 

そこで、流せるトイレブラシのブラシを無印の柄付きスポンジの柄に挟んで使用してみるとこれが大正解。ブラシはそのまま流せるのでゴミの心配をする必要もないし、柄はもしトイレの水につけてしまってもちょちょっと洗うことができます。流せるトイレブラシ専用の柄と違い、柄先に触れることなくブラシを付け替え出来て衛生的にも◎

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普段はトイレの出っ張りにひっかけています

番外編:洗面所

洗面所も水垢や排水溝のつまりに悩まされる場所。身だしなみを整える際に使うところなので、なるべく清潔に保って気分よく一日を始めたいですよね。

 

ここでもやはり激落ちくんが最強。洗面台の水垢・カビはもちろん鏡の汚れも、気になる汚れはほとんど激落ちくんで落とせます。あとは使い終わった歯ブラシを残しておけば、たいていの悩みは解決されます。

 

私は排水溝の掃除もなるべくしたくないので、100円ショップに売ってあるごみカバーを排水溝に取り付けて、髪の毛や汚れが溜まってきたらカバーごとポイっと捨てちゃっています。

 

まとめ

ストレスフルな毎日のなかで家で快適に過ごすには、どれだけ掃除をしないで清潔さを保つかが重要です。紹介した掃除グッズをすべて揃えるとなると少し費用はかさみますが「掃除しなきゃな…」という気持ちから解放され、掃除にあてる時間も減らせるのなら安いもの。家事は楽してなんぼです!

 

心置きなく新生活へのスタートを切れますように♪

 

目覚めた女性が自分を生きるロマンス小説「青い城」モンゴメリ著

 

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モンゴメリ『青い城』 画像はKADOKAWA文庫HPから

 

自分だけの“青い城”を最後に訪れたのはいつだっただろう?私の“青い城”は人里離れた森の中にある、日本家屋だった。

 

森は山の麓に広がるようなものではなく、フィンランドの森のように夏にはベリーやキノコが実り、長い冬の間雪の下に隠していた鮮やかな色彩を放つ。外見は瓦屋根の日本家屋だが、和室と洋室のどちらも備わっていて、家の裏には充分な広さの縁側がある。低い木に刺しておいたオレンジをついばむ鳥の声と、のどかに差し込む日光に満ちた部屋で、ただぼんやりと日向ぼっこをしたり乾物を作ったりするのだ。

 

人の気配はたまに現れるぼやけた影だけ。縁側に干している洗濯物の周りで、ふんふんふふふ、と鼻歌を歌い洗濯物を干すまねごとをしているのだ。陽だまりにとけるその声はとても好きだが、彼女が私に気付くことはない。ご機嫌で、たしかな存在だけを感じるいい隣人だった。私の“青い城”は数年前にうち壊されてしまい、彼女の鼻歌を聴くこともなくなってしまったが。

 

新生活が始まる四月を控え、私は精神的に参っていた。やらなければいけないことも、「やらなければいけない」という意識に押しつぶされ、何もできないまま一日が過ぎていく。寝て食べてを繰り返して体力が回復してきた頃に「本の世界に浸りたい」と本棚の積読を崩し、モンゴメリ「青い城」を手に取った。

 

心が弱っていたので、とにかく苦しい現実を忘れられるものが読みたかった。積読の中で唯一、作品紹介でハッピーエンドが約束されていたものがこれだ。”すべての夢見る女性に贈る、心温まる究極のハッピー・エンディング・ストーリー!”

 

あらすじ

貧しく、世間体を気にして逸脱を許さない家庭で寂しい日々を送る内気な独身女(オールド・ミス)、ヴァランシー。その反動で空想の世界にすばらしい”青い城”を持つ彼女のもとにある日、以前受診した医師から手紙が届く。そこには彼女の心臓が危機的状況にあり、余命はもって一年である旨が書かれていた。

悔いのない人生を送ろうと決意した彼女は、以前の彼女では考えられないようなとんでもない行動をとりはじめる。母親への口答えから始まり、暗黙の了解で縛られていた行いを次々と破り外の世界に出始める彼女。死ぬまでに自分の”青い城”を持つことができるのか?

作家情報

作者は『赤毛のアン』シリーズで世界中に愛されているL.M.モンゴメリ。1908年に『赤毛のアン』を出版して世界的ベストセラーになって以来、同シリーズの他にも多くの短編や長編を出版。日本で訳書が出版された初めてのカナダ文学者でもあります。

ほとんどの作品はモンゴメリの生まれ育ったプリンス・エドワード島を舞台に書かれているが、『青い城』は長編で唯一、モンゴメリが夏の休暇に訪れて魅了されたトロントの北部にあるバラを舞台に書かれているそう。

 

「恐れは、原罪である」――ひとりの女性の目覚めの話

主人公ヴァランシーはいつもおびえていて、家族に逆らうことも出来ずにただ言いなりになっている。小説を読むことや一人で部屋にいることさえ咎め、その日ぼうっとしていた時間を細々と書き出させて懺悔させる母親。なにもかもぱっとしない彼女を皮肉り、絶えずからかってくる親戚たち。機嫌を損ねることを恐れ黙って受け止める彼女の唯一の楽しみは、空想の中の“青い城”と、自然について書かれたジョン・フォスターの本を読むことだった。

 

一番古い記憶でさえ、戸棚の下に大きな黒い熊がいると聞かされこわがっているというものであるというヴァランシーはいつだって何かを恐れていた。心臓に異変を覚え、その道の名医である医師に見せに行きたいが親族のかかりつけ医ではない医師にかかることで彼らの機嫌を損ねることを恐れているヴァランシーの目に、ジョン・フォスターの新刊のある文が飛び込んだ。

 

「恐れは、原罪である」

「世の中のほとんどすべての悪には、その根源に、だれかが何かを恐れているという事実がある。恐れは、冷たい、ぬるぬるした蛇のように、あなたにまとわりついてくる。恐れを抱いて生きるほど、恐ろしいことはない。それは、誰がなんと言おうと、恥ずべきことなのだ」

 

 

この言葉をうけ、名医の元へ受診しに行った彼女に余命宣告の手紙が届くのだ。

 

死を宣告された彼女に恐れるものは無くなった。母親や親族を怒らせるのが怖かったのは、ずっとその者たちの間で暮らしていかねばならず、自分が折れない限り平和が保たれないと思っていたからだった。病気のことは誰にも告げず、恐れを手放した彼女は残りの人生を自分を喜ばせることに使うと決め、少しずつ自身の感情に素直に行動していく。

 

いつも心の中で思っていたことを口に出したり、親族からのあざけりにウィットに富んだ返事をするだけで気がふれたと思われるヴァランシー。世間体を気にする親族たちは彼女をいっそどこかに監禁してしまおうと躍起になが、彼女は親族たちに存在をなかったことにされるほどの突飛なことをはじめる。

 

意志を持ち対等に会話をしようとするだけで気狂いとされ、いつまでも子ども扱いし支配しつつも不名誉なオールド・ミスとして責めたてる家を出て、以前のままでは関わることのなかった人たちと一生分のきらめきを閉じ込めたような日々を過ごす、抑圧された女性が生きなおしをする物語だ。

 

埃かぶった置物のような親族たち相手に歯に衣着せずぽんぽんと言葉を返していく様子や、古臭い決まりを次々と破り、村のやっかいもの扱いされている人たちの家に乗り込んで交流を深めていく姿は爽快だ。日本でミュージカル化されているのもうなずける。

 

のちにヴァランシーが夢のような日々を過ごす、トロント北部のバラをモデルに書かれた場所の描写も「赤毛のアン」を読んだことのある人ならわかるだろう、モンゴメリの素晴らしい筆致で描かれ読者を森の中に誘い込む。読書中のあふれる多幸感に溺れること間違いなしだ。

 

なんといっても”ハッピー・エンディング・ストーリー”!約束されたハッピーエンドに傷心中も安心して読むことができるのでおすすめだ。

読み終わってみると王道のシンデレラストーリーのようにも思えるが、この作品では女性の抑圧からの解放、目覚め、自立などが描かれているように思う。一度目覚めてしまったら、もう戻ることはできない。

 

「恐れは原罪である」――往々にして私たちは人の目や将来を気にするあまり、"生きている"と言えない日々を過ごしてしまうことがある。そんな時にこの言葉を思い出したい。

 

青い城 (角川文庫)

青い城 (角川文庫)

 

 

 

だから最後の晩餐に【FensterMagazine007号をうけて】

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最後の晩餐、という言葉を聞くと、それこそ苦虫を嚙み潰したような高校時代の淡い恋の記憶が蘇る。

 

一体何の授業で課されたのか、高校生にもなって隣の席の人と「明日世界が終わるとしたら、最後の晩餐に何が食べたいか?」ということを話し合う時間があった。当時私の隣の席に座っていたのは敬語で話すのが癖のクラスのお調子者で、今と変わらず男性と話すのが苦手だった私には珍しく話しやすい相手だった。

 

猫をかぶる必要もなく、おしゃべりに興じていた私は何を思ったか「ゴキブリを食べてみたい」と言い出した。「胃の中で再生して腹を食い破るという話も聞くし普段なら絶対食べないが、最後ならば今まで食べたことがなく、食べたら後悔しそうなものを食べてもいいだろう」と。

 

その日の掃除時間が終わり教室に戻ると、お調子者が私の好きな人もいる輪の中で「ゴキブリを食べたいんですって!」と話しているのが聞こえた。まともに話したこともない好きな人に「ゴキブリを食べたい女」と認識された瞬間だった。

 

そんな私は今、動物性食品を極力摂らないプラントベースな食生活を送っている。もちろんゴキブリも食べない。

 

では今なら最後の晩餐はどう過ごすか?

 

昼頃までぶどうを摘まみながらまどろみ、すっぴんのまま近所の花屋へ生花を買いに出かける。値段とにらめっこして結局一度も買えずにいる生花をウイスキーの空き瓶に入るだけ買い、西日がたっぷり入る部屋の机に置く。土から切り離され枯れゆく姿を憂うこともなく、今この瞬間の花弁の開き、しっとりとした触り心地や香りを楽しんでともに滅びるのだ。

 

夕飯は人参と大根を切り、トマトと市販のフムスを添えただけの私定番の“絶対に頑張らないご飯”を用意するだろう。もちろん、フムスはいくらでもつけていいこととする。常にストックしているレンズ豆のトマト煮が残っていたら、それを温めてもいい。植物性中心の食事の何がいいかって、どんなに食べても胃もたれしないところだ。

 

家族のもとに帰省することも、友達と会うこともしないだろう。ふるさとは遠くにありて思ふもの。美しいものだけを思い出す。それこそゴキブリのくだりのような、苦い思い出を掘り起こす必要はないのだ。

 

夜のとばりが下りてきたら、スタンドライトだけを点けてやわい暗闇に包まれた部屋で本を読む。怒りなど、苦しみなど、悩みなど!生きる予定がないならば持っていても仕方がない。私を生かしたその何もかもを捨てて、最期にはただ感じることで得られる世界に飛び立つのだ。モンゴメリの『青い城』がいい。訪れない未来に持つ、自分だけの青い城の設計に残りの時間をすべて費やそう。

 

最後はひとりで、珈琲を飲みながら。ふとした時に愛犬のぬくもりが恋しくなるかもしれないが、そこはご愛嬌。静かに終わりを迎えましょう。

 

*この記事のお題は私の好きなクリエイター、眞鍋アンナさんが主宰しているインスタグラムマガジン、Fenster Magazine007号から頂きました。